医療機器開発責任者・坂田が乗り物酔いのメカニズムを新聞に掲載しました

平成28年8月29日毎日新聞朝刊

 夏休みが終わり、間もなく秋の行楽シーズン。旅行に遠足、体験教室と、子どもたちが乗り物で移動する機会が増える。つらい乗り物酔いを防いで、楽しい思い出を作りたい。

 ●病名は「動揺病」

 乗り物酔いの歴史をさかのぼると、紀元前5世紀ごろにたどり着く。

 「ヒポクラテスの時代にはもう、地震でもないのに揺れているような感覚に陥る『地震酔い』があった。視覚情報と平衡感覚にずれが生じ、自律神経が乱れるメカニズムは乗り物酔いと同じ。人類は昔から、苦しんできた」

 目まい治療の第一人者である川越耳科学研究所クリニック(埼玉県川越市、電話049・226・3387)の院長、坂田英明医師が説明する。

 乗り物酔いには「動揺病」という、れっきとした病名がある。大きな原因は、もちろん揺れ。道路の凹凸や波のうねりで乗り物が揺れて、体のバランス感覚をつかさどる内耳の三半規管にあるリンパ液が動き、酔ってしまう。

 目から入ってくる情報が強すぎて酔うこともある。テレビや映画で画面がチカチカとした光を放ったり、動いた映像が流れたりした時、気分が悪くなることも酔いの一種。脳が「揺れている」と判断してしまうという。

 「人間を含め、哺乳類は自ら走り回ったりする際にはバランス感覚を発揮するが、外部から与えられる上下、左右、前後の動きには十分に対応できない」と坂田さん。馬車、汽車、自動車、飛行機……。産業革命以降、人類の移動手段は着々と進歩してきた。その速さに、人間の身体の進化は追いつかないまま。こうして乗り物酔いは、どんな時代もついて回ってきた。

 ●へそに梅干し効果

 坂田さんが勧めるのは、乗る前と乗っている間に分けた対策だ。

 まずは乗る前から。坂田さんは、酔わない「おまじない」を挙げる。「あなたは酔いやすい」「気分が悪くなったら先生に言うように」と言い聞かせるのは逆効果。「酔った経験が思い起こされ、余計に酔いやすくなる。暗示をかけるイメージで『絶対に大丈夫だから、楽しんできて』と話しかけてあげてほしい」

 「へそに梅干しを張る」といった昔ながらの療法も、暗示の一環として有効。乗り物特有のにおいが苦手なら、好きなにおいのする文房具をお守りとして持たせる。「ペパーミントの香りには吐き気を抑える効果があるため、ハンカチなどにハッカ油を垂らし、かぐといい」という。

 飲食物はどうか。食事は乗る3時間前に、腹7分目までで済ませる。「満腹でも空腹でも、自律神経は安定しない。胃や腸に負担をかけない、消化のよいものが望ましい」。ショウガに含まれる辛み成分には、腸の働きを安定させ、吐きにくくする作用がある。乗る1時間前に、すりおろしたショウガを紅茶やみそ汁などに入れて飲ませたい。

 酔い止めの薬は「薬を飲んだから大丈夫」という安心感も得られる。やはり乗る1時間前ごろに飲ませるといい。睡眠不足も酔いにつながりやすいので、十分に眠って体調を整えておく。

 ●ゲームは厳禁

 乗っている間は、読書や携帯電話の操作、目から強い刺激が入るゲームは厳禁。あごを引いて座ると、三半規管のリンパ液が水平に保たれる。遠くの動かない景色をぼんやり見るのが望ましいが、目をつぶってもいい。予測できない揺れに振り回されると酔いやすくなる。進行方向が見えるなら、カーブの揺れに合わせて体を軽く傾ける。

 乗り物酔いを起こしやすいのは4〜20歳ごろ。20歳を過ぎると、平衡感覚をつかさどる前庭小脳の機能が衰え始め、酔いにくくなる。効果はすぐに表れないが、バランス感覚を養うトレーニングで体質を改善し、目まいを感じにくくすることが可能だ。起床時と就寝前に布団の中でできる運動を、それ以外は入浴前など、時間帯と回数を決めて毎日の習慣にすることを心がけよう。【鳴海崇】

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